小畠宏允(おばたひろのぶ)
小畠宏允(おばたひろのぶ)
石文化研究所所長
NPO法人柳田國男『先祖の話』を読む会理事長
十人の会 代表
1945年福岡生まれ。
花園大学禅学科卒業。
龍谷大学博士課程単位取得。
禅文化研究所および京都大学人文科学研究所に学ぶ。
著書に『禅の語録3 歴代法宝記』(共書、筑摩書房)、『日本人のお墓』(監修・編著、日本石材産業協会)ほか、学術論文、随筆など多数。
事務所
〒222-0033
神奈川県横浜市港北区新横浜
1-14-8-207

コラム

2013/08

質問、「あなたは《お墓が好き》ですか?」 
「ハイ、私は、たまらないくらいお墓が大好きです

 

 

私は一般向けのお墓の講演会でよく「皆さんはお墓が好きですか?」とたずねます。すると大抵はしんみりした雰囲気の中で、そっと手を挙げる方が二、三人くらいいます。

 

「では、お墓が好きでたまらない方は、ちょっと手を挙げてください」というと、会場で軽い笑い声がちらほら聞こえますが、たいてい誰も手を挙げる人はいません。

 

それで「私はお墓が大好きで、好きでたまらないくらい⦅お墓大好き人間⦆なんです」というと、また、会場が静まり返ります。

 

実は、私がお墓を好きになったのには、こんなことがあったからなんです。

 

平成元年から私は、東京にある墓石店の全国組織の事務局に勤務していました。そこでは全国各地の支部会議に毎年二回ずつ出かけていましたが、勤めて四、五年したころから、出張の際に時間が許せば、会場近くの墓地を見てまわり始めました。

 

最初はひとりで墓地にいて、ガサッと物音がすると、「あ~ッ、出たッ!」って、首筋がぞっとしました。そんな経験を何度もしたことがありますが、とある墓地で蓮華台のあるお墓に目が止まりました。そんなお墓は全国にたくさんありますから決して珍しいものではないのですが、その時は妙にそのお墓にひきつけられました。

 

「ンッ…?」、「アッ、そうか、そうなんだ!」と、ピンと思い当たるものがありました。キーワードは「蓮華台」です。

 

私は人の倍以上、九年間も大学で仏教を勉強した変わった人間ですが、その時初めて、ハッと気付いたのです。

 

仏教では、蓮華台の上にあるのは如来(ブッダ)や菩薩など、かならず本尊と呼ばれる尊像だけです。そして蓮華は悟りの象徴ですし、仏教のシンボルでもあります。

 

それがなんと、名もない普通の人のお墓の一番上の石、これを業界では「棹石(さおいし)」、あるいは「仏石(ほとけいし)」と言いますが、その石の下に蓮華文様の台石があったのですから、お墓に埋葬されている「お骨」となった故人は、みな「ホトケ様」になっているのです。

 

私は思わず、「よかったですね」と独り言をいっていました。

 

そして、墓地をグルッと見わたすと、いくつもの蓮華台のついたお墓がありました。蓮華台のないお墓の故人もみな、同様にホトケ様になっているんです。その時私は、「あぁ、ここは、みんなホトケ様になった人たちだけがいる浄土なんだ」と気づきました。

 

そう思うと「なんで、お墓や墓地を恐がっていたんだろう」と自分がおかしくてたまりません。ホトケ様が悪いことをしたり、人に祟ったりするわけがありません。それなのに、物音なんか恐がるなんて……。

 

そうなんです、墓地は日本で一番ステキな「極楽浄土」なんです。しかも「入場料は何時間いてもタダ」。こんないいところを、みなさんは他に知っていますか?

 

それからというもの私は、お墓が好きになり、以来熱心にお墓の勉強をするようになって、とうとうお墓が「好きでたまらない人間」になりました。

 

私がこの時気付いたことは、その後に勉強したお墓のことと全く同じ内容でした。そのことも、これからいろいろとお話ししていきます。

 

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