小畠宏允(おばたひろのぶ)
小畠宏允(おばたひろのぶ)
石文化研究所所長
NPO法人柳田國男『先祖の話』を読む会理事長
十人の会 代表
1945年福岡生まれ。
花園大学禅学科卒業。
龍谷大学博士課程単位取得。
禅文化研究所および京都大学人文科学研究所に学ぶ。
著書に『禅の語録3 歴代法宝記』(共書、筑摩書房)、『日本人のお墓』(監修・編著、日本石材産業協会)ほか、学術論文、随筆など多数。
事務所
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1-14-8-207

コラム

2013/08

質問、「《よい》お墓ってありますか? 」
「ハイ、日本には《よいお墓》でないお墓は一基もありません。 すべて《善いお墓》だけです」 

 

 

「よい」という漢字には、「好い」「良い」「佳い」「美い」「吉い」「善い」などいろいろあります。

 

白川静先生の漢字辞典(白川静『常用字解』平凡社)によって、これらの「よい」の字からお墓の意味を解釈しますと、まず、あなたが好感、親近感のもてるお墓は「好いお墓」、反対は「嫌いでイヤなお墓」です。

 

客観的な基準に合格した仕上がりなら「良いお墓」で、反対は「不良・不合格のお墓」。

 

美しく、めでたく感じるなら「佳いお墓」、反対は「不格好で釣合いの悪い、不快なお墓」。

 

同じ「うつくしい」でも、外観が美しくすぐれて、品があるなら「美いお墓」で、反対は「醜く品のないお墓」。

 

そして縁起がよくてめでたいなら「吉いお墓」で、反対は「不吉なお墓」です。

 

最後に「善いお墓」といえば「健全で、宗教的、道徳的、哲学的に優れた正しいお墓」という意味になり、不思議なことに、その反対のお墓はこの世に存在しません。

 

では、質問の「よいお墓」とは、どの「よい」を尋ねているのでしょうか?

 

個人的な好き嫌いの感情でなく、「お墓」本来の宗教的なお祀まつり(=お墓参り)をする「祭祀場」としての、つまりそれが一般的な、普通の意味ですが、そうした意味での「よいお墓」についての質問でしたら、それは「善いお墓」のことで、その答えは明解です。

 

つまり、外国のことはわかりませんが、少なくとも日本には「善いお墓」でないお墓はただの一基もありません。すべて「善いお墓」だけです。

 

このことは色々な角度から、歴史的な文献資料などによって証明できますが、そのすべての内容を簡単に述べることはとてもできません。

 

なぜなら、これを判りやすく説明するには、日本のお墓に影響を与えたすべての分野の宗教や思想や考え方を、各分野の資料に一つ一つボーリングをして探り当てた結果だったからです。

 

それは、例えば、日本民俗、日本神話、インド・中国・日本の仏教、儒教や風水などの中国思想、文化人類学、考古学などなどの成果まで及びます。しかし、そうした各分野にボーリングするにしても、ボーリングする側にも一定の、確たる視点が必要です。

 

その視点を確立するためには、お勧めの善本があります。柳田國男著『先祖の話』(石文社)です。私はこの本のことを「(日本人の)お墓のバイブル」と言い続けています。そのわけは、これから少しずつ書いていくことにします。

 

 

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